2023.08.19

犬が大切に飼育していた蚕(カイコ)を食べた後に起こったお話とは・・・。


今回は少し変わった視点での文献を参照してみました。

その昔、三河国(現在の愛知県東部)のある郡司(今で言う市長みたいな!?)がいたそうです。
その妻達(二人いたそうです)の養蚕(ようさん)によって
羽振りよく生活していたそうです。

ところがある日、その本妻の蚕がみんな死んでしまったそうで
郡司はその本妻の家に寄り付かなくなり、家はさびれてしまったそうです。

三〜四年経ったある日、蚕がひとつ、桑の葉についているのを見つけたそうです。
ひとつではなんともしようがないが、その蚕を大事に飼う事にし
家で飼っていた白い犬の前で蚕に桑の葉を食べさせていた所
その犬が蚕を食べてしまったそうです。

悲しくて犬の前で泣いていると、犬がくしゃみをした拍子に
鼻の穴から白い糸が少しずつ二筋出て来たそう。
その二筋の糸をとって引くとくるくる長く出続け、枠に巻き、
別の枠に巻き、そして竹の竿に巻き、さらに桶などにまで巻き、
四〇〇〇〜五〇〇〇両(質量の単位。一両は約40グラムだそうです)ばかり
巻き取ったところで糸はつき、犬は倒れて死んでしまったそうです。

これは仏神が犬に化身して助けてくれたと考えた本妻は
裏の畑の桑の木の下に葬ったそうです。

ちょうどそんな時に夫である郡司が通りかかると、
妻一人で多くの糸を撚(よ)っている。
その糸を見れば、他の糸に比べ雪のごとく白く光り素晴らしい糸だったそうです。

一部始終を聞いた郡司は仏神のたすける人を粗略にあつかったことを悔い、
以後もう一人の妻のところへは行かなくなったそうです。

その後、犬を埋めた桑の木には蚕が隙間なく繭(まゆ)をつくり、
極上の糸を多く作ることが出来たそうです。
この糸には”犬頭糸”と名づけて、天皇に奉ったそうです。

(「今昔物語集」巻二十六の十一話 ”参河国に犬頭糸を始めし語” より参照)


お話の内容としては現代の昼ドラを見ている様な展開ですが、
”蚕を食べる”と言う行動に出た犬はどう言う思いだったのかなぁ。と色々想像してしまいます。
きっと優しい飼い主さん思いの真っ白な犬だったんだろう。とイメージしています。



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